kmiura on Nostr: ...

大根キムチを作るときに、最初に大根を皮を剥かずに賽の目に切って天日干しにするのであるが、二時間ほど天日にさらしている間に大根の皮の部分がほんのりと緑色になる。

「葉緑体が分裂して増えたなー」とか考えるまでもなく、かつて顕微鏡でさんざん眺めていた植物細胞のプルプルした葉緑体の様子が眼の前に浮かんでくるわけであるが、生物学の研究をずっとしていてよかったなー、と思うのはそのようなミクロな実感がいろいろあることである。

森を眺め、木々一本一本の葉の気孔から水分が蒸散されて浸透圧が上がり、根から水をぐんぐん吸い上げるというその様子が、これまた教科書の知識ではなくリアルに頭の中に見えるようになったのは、大学院で学部生の植生の実習に付き合って演習林を歩き、ふと立ち止まって向かいの尾根を眺めたときである。単に実験がおもしろいだけではなく「研究していてマジでよかった」という気分になったのはおそらくあのときがはじめてである。